那年的夏天・・・
DESCRIPTION
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「夏休み」という非日常には、だれの人生においても、印象深いエピソードがあるものです。
昼間から堂々と駆け回り、夜遅くまで遊びつくす。
長いようであっという間の短い期間ですが、夏の暑い日差しのもとに、ラジオ体操、昆虫採集、プールや海、家族旅行、お盆、夏祭り、花火など、ワクワクするイベントが詰まっています。
その夏を象徴するのは、旬のスイカというモチーフではないでしょうか。
赤と緑のコントラストに、さっぱりとした甘いみずみずしい味わいのスイカは、だれのどの夏の記憶にも、必ず残る風物詩です。
彦十蒔絵が手掛けた本作は、鮮やかな赤いスイカに、今まさに包丁がざっくりと切り込む様子をとらえています。実の赤とグラデーションの美しさはもちろん、スイカの黒い縞模や種までも、漆芸ならではのしっとりとした艶やかな美しさで表現されています。また、木製とは思えないほどリアルに金属の表現がなされた包丁は、日常的に使い込まれた質感までもが見事に表されています。まな板の木目に至っては、間近で鑑賞しても、本物と見間違うほどのリアリティです。驚くことに、これらの異なるすべて質感や色合いが、漆芸によって表現されており、本作はまさに彦十蒔絵の粋を集めた作品といえます。
そして、どこまでが本物なのか、と作品を持ち上げた時、その想像以上の軽さにきっと驚くことでしょう。
「思っていたよりも軽い」、という違和感は、どこから来るのでしょうか。
人は、成長するにつれ、たくさんの経験を積み、合理的に生きようとします。
普段はその経験があるからこそ、便利に日常を生きられるのですが、逆に考えてみれば、それはすべてに対して鈍感になっているともいえるかもしれません。つまり、便利さと引き換えに、私たちはなにか大切なものを失っているのです。
子供のころ、私たちは特別なことをせずとも、ただ学校からの帰り道がとても楽しいものでした。毎日新しいことに出会い、好奇心が刺激され、感情が揺れ動くような驚きに満ちていました。積み上げてきた経験の中で過ごす今とは、また違った時間の中で生きていたのです。
本展示では、そんな子供時代に誰もが体験したであろう、夏休みを想起させるような展示にしています。ちゃぶ台に上のスイカ、かすかに聞こえる蝉の声…。作品の鑑賞を通して、ご自身の記憶の中にある夏を体感していただくことで、ぜひ童心に帰っていただきたいと考えています。そうすることで、なんにでも好奇心を持っていたあの頃の気持ち、常識にとらわれない自由な発想を、思い出すことができるのではないでしょうか。
また、童心に帰ることは、出自についても振り返る契機ともなります。
結局自分は何者なのだろうか、という問いには、誰から生まれて、どこで育って、何が好きだったんだろう、と振り返ることでその答えが見えてくるでしょう。
本作は、スイカの形をした作品ですが、あえて題名にスイカの文字は入っていません。それは、スイカというモチーフを通して、各人の記憶の中にある、思い出深い夏を想起させたい、という意図があるからです。
あなたの大切な「あの年の夏は」、どんな夏でしたか?誰と一緒に過ごし、何をしていましたか。作品を鑑賞し終わったこのひと時が、それらを思いだし、ご自身について、少しの間考えてみていただく機会となれば幸いです。
B-OWND
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| 作家 | 若宮隆志(石川県) |
|---|---|
| 素材・技法 | 漆 |
| サイズ | 幅35 × 奥行25 × 高さ19 mm |
| 制作年 | 2023年 |
