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氏家昂大 ヒーロー背景

氏家昂大

生命が脈打つ、気高き反骨精神

生物の硬い鱗、または分厚い皮膚を思わせるその表面は、凹凸に富み、また形もいびつである。
陶磁器のうわぐすりにできた、細かいひび割れ。
「貫入」というこの伝統的な技法は、その割れ目に鮮やかな色漆をしみこませることで、新たな表現へと生みなおされた。
器全体をめぐるその細い亀裂は、まるで透けた皮膚の下にのぞく毛細血管のように、どこか痛々しくも、確かな生命感を主張する。

氏家は、小耳症という先天性の一側性難聴を患い、不完全な左耳を持って生まれた。
1-2万人に一人という確率である。
幼少期はその耳の形成のため、10回にもわたる手術が行われたが、
しかし、その末に出来上がった耳は、氏家に大きなショックを与えた。
自分の身体の一部として、受け入れがたい形をしていたからだ。

繰り返された「痛み」の経験。それに加え、身体の一部に対して、「気持ち悪い」、と率直に感じた異物感。だがそれも紛れもなく自分自身であり、完全に否定することは、とうていできなかった。

それゆえに、自身の分身ともいえる作品をつくり出す行為は、氏家にとってこの強烈なコンプレックスと向き合い、自己を肯定していく過程でもある。

先天的な身体の不自由はしかし、この世の生き物には、一定数に起こりうることだ。それは生命の神秘によるものであり、どんな姿であっても、命の尊さには変わりはない。
多様性が叫ばれるこの社会のなかで、氏家の作品は「不完全な美」をありありと提示する。

苦しみを抱えているが、けして絶望はしないという意思。それらを昇華しようとする気概。
アーティストの生きざまを物語る作品には、気高き反骨精神ともいうべきものが表れている。

今まさに、陶芸というジャンルを超え、純粋に表現を追い求めようとする姿勢の先に、なにか大きな変化を迎える予感じみたものがある。それらはひそかに、しかし力強く、たしかな胎動を響かせはじめている。

B-OWND
氏家昂大

氏家昂大

1990年
宮城県仙台市生まれ
2013年
東北芸術工科大学芸術学部美術科工芸コース 卒業
2015年
東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻工芸研究領域 修了
2026年
現在、岐阜県多治見市を拠点に活動
個展
2026年
「Biological Chaos Wabi/異形わび」銀座一穂堂、東京
2026年
「Biological Chaos Wabi: On Becoming」Bernheim Gallery、イギリス
2025年
「The Movement of Genius」The Stratford Gallery、イギリス
2024年
「Pulse」B-OWND Gallery、東京
2023年
「SKIN & BODY: CRAZING VESSELS BY KODAI UJIIE」Ippodo Gallery New York、アメリカ
2022年
「Japanese Vanguard」The Stratford Gallery、イギリス
2022年
「釉肌」銀座一穂堂、東京
2019年
「Skin Works」銀座一穂堂、東京
グループ展
2025年
「Eidolon」Bernheim Gallery、スイス
2025年
「Search For Tomorrow」Bernheim Gallery、イギリス
アートフェア
2026年
「Zona MACO」Galería Mascota、メキシコ
2026年
「FOG Design+Art」Ippodo Gallery、アメリカ
2026年
「Salone Raritas」SIDE GALLERY、イタリア
2026年
「Fine Arts Paris」Ippodo Gallery、フランス
2026年
「Tokyo Gendai」LUX FEMINAE、東京
2025年
「Aspen Art Fair」Ippodo Gallery、アメリカ
2025年
「MATERIAL Art Fair」Galería Mascota、メキシコ
2024年
「Salon Art + Design」Ippodo Gallery、アメリカ
2024年
「Independent」Ippodo Gallery、アメリカ
2024年
「COLLECT」The Stratford Gallery、イギリス
2022年
「Design Miami」Ippodo Gallery、アメリカ(~2025年)
コレクション
2024年
Seattle Art Museum、アメリカ
2023年
Warehouse Art Museum、アメリカ