田辺竹雲斎
この世界は絶え間ない創造と破壊の循環、そして相互連関で成立している。
私たちの身体は、日々新陳代謝という細胞の生滅を繰り返し、他の生命との間で交換と循環を続けることで維持されている。生命とは、変わり続けるなかに保たれる平衡そのものだ。生まれた恒星は膨張を開始し、最終的に超新星爆発により死を迎えるが、爆発で生まれた破片は次の星の誕生を促す。ミクロからマクロまで、森羅万象は「創造と破壊」そして互いの「つながり」によって成り立っている。
竹工芸家・四代目田辺竹雲斎の作品は、「創造と破壊」「つながりを意識した相互連関」を内在している。代表作であるインスタレーション作品の数々は、圧倒的なスケールもさることながら、竹が密に編み重なる繊細さで、見る者に息をのませる。
接着材などを一切使用せず、ただ竹が互いに重なり合うことによって成り立っている美しいインスタレーション作品は、展示期間が終わると、すべて解体されることになる。だからこそ、竹ひごを引っ張ると解ける技法で編まれている。解かれたうちの一部の竹は使用できなくなるが、多くの竹はまた再利用されて、新しい素材と組み合わさって次の作品に生まれ変わる。
あたかも細胞のように、死んでいくものと生まれるものがあり、相対する二つが循環していくのだ。
作品には常に田辺の願いが込められている。いのちといのち、人と人のつながりであり、自然と人のつながりである。田辺の代表的なインスタレーション作品には、『五大』というタイトルが冠されている。五大とは古代インドの思想で、宇宙を構成する「地・水・火・風・空」の五つの要素だ。竹は「地」に根を張り、大地から「水」を吸い上げ、太陽の「火」を浴び、「風」に鍛えられながら、しなやかに天を向いて伸びていく。その絶妙な相互連関をもたらす根源的なものが「空(くう)」である。インド人が見出したゼロにも通じ合う、有でも無でもなく、なおすべての基底となる概念だ。
120年余の竹工芸の歴史を継承する田辺家の四代目。
田辺家の教えの中に「伝統とは挑戦なり」とある。形式に固執するのではなく、臆せず創造と破壊に挑み続ける。先代の表現や技法に対して、本質は受け継ぎながらも、自己の個性を見極める中で新しい挑戦をしてきた。その一つの結実が、四代目によるインスタレーション作品でもある。素材における創造と破壊の循環。歴史における創造と破壊。その両面を包摂した作品は「空」という本来は見ることのできない実在さえ、力強いイメージで人々に感じさせるのではないか。
ピンと張りつめた、けれどもしなやかで優美な竹工芸の表情。なによりも、竹といういのちの醸す温かみ。四代目田辺竹雲斎の作品は、生命の連続性と、無数につながり合う関係性を私たちの奥底に呼び起こす。この世界と私たちの本来の関係性を再発見させ、過去・現在・未来の留まることのないつながりを象徴しているかのようである。
B-OWND
この世界は絶え間ない創造と破壊の循環、そして相互連関で成立している。
私たちの身体は、日々新陳代謝という細胞の生滅を繰り返し、他の生命との間で交換と循環を続けることで維持されている。生命とは、変わり続けるなかに保たれる平衡そのものだ。生まれた恒星は膨張を開始し、最終的に超新星爆発により死を迎えるが、爆発で生まれた破片は次の星の誕生を促す。ミクロからマクロまで、森羅万象は「創造と破壊」そして互いの「つながり」によって成り立っている。
竹工芸家・四代目田辺竹雲斎の作品は、「創造と破壊」「つながりを意識した相互連関」を内在している。代表作であるインスタレーション作品の数々は、圧倒的なスケールもさることながら、竹が密に編み重なる繊細さで、見る者に息をのませる。
接着材などを一切使用せず、ただ竹が互いに重なり合うことによって成り立っている美しいインスタレーション作品は、展示期間が終わると、すべて解体されることになる。だからこそ、竹ひごを引っ張ると解ける技法で編まれている。解かれたうちの一部の竹は使用できなくなるが、多くの竹はまた再利用されて、新しい素材と組み合わさって次の作品に生まれ変わる。
あたかも細胞のように、死んでいくものと生まれるものがあり、相対する二つが循環していくのだ。
作品には常に田辺の願いが込められている。いのちといのち、人と人のつながりであり、自然と人のつながりである。田辺の代表的なインスタレーション作品には、『五大』というタイトルが冠されている。五大とは古代インドの思想で、宇宙を構成する「地・水・火・風・空」の五つの要素だ。竹は「地」に根を張り、大地から「水」を吸い上げ、太陽の「火」を浴び、「風」に鍛えられながら、しなやかに天を向いて伸びていく。その絶妙な相互連関をもたらす根源的なものが「空(くう)」である。インド人が見出したゼロにも通じ合う、有でも無でもなく、なおすべての基底となる概念だ。
120年余の竹工芸の歴史を継承する田辺家の四代目。
田辺家の教えの中に「伝統とは挑戦なり」とある。形式に固執するのではなく、臆せず創造と破壊に挑み続ける。先代の表現や技法に対して、本質は受け継ぎながらも、自己の個性を見極める中で新しい挑戦をしてきた。その一つの結実が、四代目によるインスタレーション作品でもある。素材における創造と破壊の循環。歴史における創造と破壊。その両面を包摂した作品は「空」という本来は見ることのできない実在さえ、力強いイメージで人々に感じさせるのではないか。
ピンと張りつめた、けれどもしなやかで優美な竹工芸の表情。なによりも、竹といういのちの醸す温かみ。四代目田辺竹雲斎の作品は、生命の連続性と、無数につながり合う関係性を私たちの奥底に呼び起こす。この世界と私たちの本来の関係性を再発見させ、過去・現在・未来の留まることのないつながりを象徴しているかのようである。
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