井上祐希
一点の曇りもない、透き通るような白磁。その素地に、街の方々にありありと広がる、現代のヴィヴィットな世界を描く。陶芸家・井上祐希は、伝統という壁に新たな色彩を引き込もうと奮闘する、一人の若きアーティストである。
井上は、400年の歴史を持つ陶磁器の産地、有田の出身。良質な土、ロクロの高い技術に定評のある萬二窯の三代目である。人間国宝の祖父・井上萬二氏の作品は、豪華な絵柄が特徴的な有田焼において、白磁の美しさを活かした造形を示し、その新たな可能性を切り開いたことで「究極の白磁」と称される。
井上は、幼いころから萬二窯を継ぐことを期待されてきた。反発はなかったが、しかし一方で、ストリートカルチャーに憧れ、グラフィティ・アートやラップに感性を刺激された。一時はファッション業界に身を置きながらも、この出自・資質をどう生かしていくか、彼はこの課題と向き合い続けた。
ストリートカルチャーの歯に衣着せぬ物言いやハングリー精神、色彩感覚、ファッション。それらは、井上にとって、恵まれた環境を自覚させるとともに、自らが持ちえないものも自覚させた。それらに対する強い憧憬は、井上の中で徐々に熟成され、作品にその片鱗を見せ始めている。
たっぷりと釉薬を含ませた筆を、軽やかに、自由に、ときに振るように揺らす。するとそこには、強弱にとんだ美しい景色が浮かび上がる。「釉滴(ゆうてき)」と呼ばれる技法を用いた井上の代表的作品は、あえて筆をコントロールせず、無意識に浮かび上がるそれらの、偶然性・即興性を楽しむものである。
窯の特徴である白磁の美しさを引き立てる表現でありながら、祖父・萬二氏の完成された造形美とも異なる方向性。井上がまさに今踏み出したこの道の先に、ストリートカルチャーと伝統が融合した、新たな境地が見えてくるのだ。
伝統という名の白い壁に、彼はこれから何を描くのだろうか。有田という地を愛し、誇りながらも、肌で感じる現代の美を自らの感性で表現すること。
アート、工芸、ファッション…。そういったジャンルに捕らわれない先に、井上が目指す新しい有田焼の姿がある。
B-OWND
一点の曇りもない、透き通るような白磁。その素地に、街の方々にありありと広がる、現代のヴィヴィットな世界を描く。陶芸家・井上祐希は、伝統という壁に新たな色彩を引き込もうと奮闘する、一人の若きアーティストである。
井上は、400年の歴史を持つ陶磁器の産地、有田の出身。良質な土、ロクロの高い技術に定評のある萬二窯の三代目である。人間国宝の祖父・井上萬二氏の作品は、豪華な絵柄が特徴的な有田焼において、白磁の美しさを活かした造形を示し、その新たな可能性を切り開いたことで「究極の白磁」と称される。
井上は、幼いころから萬二窯を継ぐことを期待されてきた。反発はなかったが、しかし一方で、ストリートカルチャーに憧れ、グラフィティ・アートやラップに感性を刺激された。一時はファッション業界に身を置きながらも、この出自・資質をどう生かしていくか、彼はこの課題と向き合い続けた。
ストリートカルチャーの歯に衣着せぬ物言いやハングリー精神、色彩感覚、ファッション。それらは、井上にとって、恵まれた環境を自覚させるとともに、自らが持ちえないものも自覚させた。それらに対する強い憧憬は、井上の中で徐々に熟成され、作品にその片鱗を見せ始めている。
たっぷりと釉薬を含ませた筆を、軽やかに、自由に、ときに振るように揺らす。するとそこには、強弱にとんだ美しい景色が浮かび上がる。「釉滴(ゆうてき)」と呼ばれる技法を用いた井上の代表的作品は、あえて筆をコントロールせず、無意識に浮かび上がるそれらの、偶然性・即興性を楽しむものである。
窯の特徴である白磁の美しさを引き立てる表現でありながら、祖父・萬二氏の完成された造形美とも異なる方向性。井上がまさに今踏み出したこの道の先に、ストリートカルチャーと伝統が融合した、新たな境地が見えてくるのだ。
伝統という名の白い壁に、彼はこれから何を描くのだろうか。有田という地を愛し、誇りながらも、肌で感じる現代の美を自らの感性で表現すること。
アート、工芸、ファッション…。そういったジャンルに捕らわれない先に、井上が目指す新しい有田焼の姿がある。
B-OWND
受賞歴
入選、その他