新垣優人
沖縄のシーサーは、本来、屋根や門で家を守る存在であった。
風や雨、そして目に見えない災いを引き受ける「守護獣」として、祈りとともに置かれてきた像である。
新垣優人にとってシーサーは、単なるモチーフではなく、自分を「作ること」へ導き、生を支えた、極めて個人的な守り神でもある。
自然や御嶽に神を感じる沖縄では、岩や木、海風や集落の境界など、あらゆるものに霊性が宿ると考えられてきた。見えない存在に対して、石や祠、シーサーの像を介して祈りを捧げる。そのアニミズム的な信仰の延長線上に、新垣のシーサーは位置づけられる。彼にとってシーサーとは、祈りや不安、感謝を受け止める「祈りを宿す器」なのである。
やちむんの窯元に生まれた新垣は、代々受け継がれてきた「窯の顔」としてのシーサーの伝統を踏まえつつも、職人それぞれの個性を尊ぶ風土の中で育った。そのため彼の造形には、型をなぞるだけではない、土着の信仰への敬意と、現代の感性を引き受けるしなやかさが共存している。空想上の神獣としてのシーサーは、彼の手の中で、今この時代の「生」を見守る存在へと更新されているのだ。
今回の新作では、そのシーサーの身ぶりに、西洋占星術の「12星座」という記号が織り込まれる。角やたてがみ、体表のリズムに星座のイメージが響きながらも、あくまで中心にあるのは、沖縄の土と火と祈りがつくり出す守り神としてのシーサーの気配である。星座は、現代を生きる私たちがこの土着の守護獣ともう一度つながるための、ひとつの入り口となる。
制作において新垣が貫くのは、「祈りの宿る場所」の作り手としての態度である。「自分はただ、かっこよく作るだけ。魂や祈りは、その人自身が込めるものだ」と語るように、作品の内側にはあえて意味を確定しない余白が残されている。その余白があるからこそ、鑑賞者は自分の物語や守りたい存在を、静かにシーサーの姿に重ね合わせることができる。
沖縄の歴史と風土に根ざした祈り、西洋から取り込んだ星の記号、そして新垣優人という一人の作家の人生。そのすべてが溶け合うとき、シーサーは再び、現代を生きる私たちの「心の依り所」として立ち上がる。
B-OWND
沖縄のシーサーは、本来、屋根や門で家を守る存在であった。
風や雨、そして目に見えない災いを引き受ける「守護獣」として、祈りとともに置かれてきた像である。
新垣優人にとってシーサーは、単なるモチーフではなく、自分を「作ること」へ導き、生を支えた、極めて個人的な守り神でもある。
自然や御嶽に神を感じる沖縄では、岩や木、海風や集落の境界など、あらゆるものに霊性が宿ると考えられてきた。見えない存在に対して、石や祠、シーサーの像を介して祈りを捧げる。そのアニミズム的な信仰の延長線上に、新垣のシーサーは位置づけられる。彼にとってシーサーとは、祈りや不安、感謝を受け止める「祈りを宿す器」なのである。
やちむんの窯元に生まれた新垣は、代々受け継がれてきた「窯の顔」としてのシーサーの伝統を踏まえつつも、職人それぞれの個性を尊ぶ風土の中で育った。そのため彼の造形には、型をなぞるだけではない、土着の信仰への敬意と、現代の感性を引き受けるしなやかさが共存している。空想上の神獣としてのシーサーは、彼の手の中で、今この時代の「生」を見守る存在へと更新されているのだ。
今回の新作では、そのシーサーの身ぶりに、西洋占星術の「12星座」という記号が織り込まれる。角やたてがみ、体表のリズムに星座のイメージが響きながらも、あくまで中心にあるのは、沖縄の土と火と祈りがつくり出す守り神としてのシーサーの気配である。星座は、現代を生きる私たちがこの土着の守護獣ともう一度つながるための、ひとつの入り口となる。
制作において新垣が貫くのは、「祈りの宿る場所」の作り手としての態度である。「自分はただ、かっこよく作るだけ。魂や祈りは、その人自身が込めるものだ」と語るように、作品の内側にはあえて意味を確定しない余白が残されている。その余白があるからこそ、鑑賞者は自分の物語や守りたい存在を、静かにシーサーの姿に重ね合わせることができる。
沖縄の歴史と風土に根ざした祈り、西洋から取り込んだ星の記号、そして新垣優人という一人の作家の人生。そのすべてが溶け合うとき、シーサーは再び、現代を生きる私たちの「心の依り所」として立ち上がる。
B-OWND
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